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西平 直「シュタイナー入門」
2004年08月15日 | 本・雑誌 | | |
出版年:1999年
出版社:講談社(講談社現代新書)
定 価:660円
オススメ度:★★★
ここ最近、シュタイナーについて幾分かの興味を持っている。きっかけはNHKで数年前に放映された「エンデの遺言」というドキュメンタリーで、ミヒャエル・エンデの経済に対する指摘にある思想的背景として触れられていたのがきっかけである。シュタイナーというと妄想癖の強いオカルティストで、いわゆる精神世界への窓口的な人物としてのイメージが強い。それが経済という極めて実社会的なテーマにつながりうるという点が興味を引いた。そこで実際にいくつかのシュタイナーに関する手引書のようなものを読んでみたのだが、これが私にはどうもよろしくない。その内容は極めて専門的な哲学的視点から書かれたものであるか、それとも精神世界まるだしのまさにオカルトと呼ぶにふさわしいもののどちらかである。
本書はその中においてシュタイナー初心者に対し極めて分かりやすくその思想と人物像を紹介している。もちろんその思想の特殊性において、その全体と核心を十分に理解しうるには物足りなさを感じる内容である。また筆者が執筆者として完全な客観性をたもっているかという点に関してもいささか問題は否めない。しかしながら筆者が「入門以前」と指摘するように、シュタイナー思想のその導入への糸口を見つけるためにはそれなりに有効である。とりわけ筆者と学生の間で実際にやり取りされたいくつかのエピソードは、入門者の抱く極めて初歩的な問題の意味を解決するには役に立った。
しかしながら実際にシュタイナー思想そのものに触れてみると、その怪しさというか荒唐無稽さに圧倒される。これは表層的な部分だけをかすめとった上での安易な批判ではない。むしろそう言われることが思想家として生きたシュタイナー自身の宿命であるとの理解によるものだ。この点については筆者も触れているが、もし仮に彼が芸術家として生きたのであれば、現在のような誤解の上に立たされることはなかったはずである。人生観、世界観、宇宙観……それを自らのイメージの中で膨らまし具体化することは芸術家にとってごくごく普通の作業である。しかし彼はそれをあくまでも哲学的文脈の中で展開しようとした。その結果、彼の思想そのものがオカルトとして扱われてしまっていることは、その内容の善し悪しはともかく残念なことだ。
ただ、彼がもし芸術家だったらという仮定を実際に想定した場合、その思想がどれほどまでに広く影響を与えたのかという点に関しては、私は私の立場を持って冷静に考えたいと思う。例えば、近年ボアダムズのEYE氏が「B∞DOMS」で具現化した宇宙のイメージが、現実的な社会的影響力としてどれほどの力を持ちうるかはここで説明する必要もない。芸術とはそういうところに位置していることが前提だからだ。
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