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小沢健二&エリザベス・コール「おばさんたちが案内する未来の世界」を見に行った・その1

2007年12月10日 | | del.icio.usに追加 | はてなブックマークに追加 | livedoorクリップに追加

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大阪市立近代美術館(仮称)心斎橋展示室で行われた「映画『おばさんたちが案内する未来の世界』を見る集い」に行ってきました。

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日 時:12月8日(土)・9日(日) 各日13時30分〜18時
会 場:大阪市立近代美術館(仮称)心斎橋展示室
定 員:60名程度/回(応募多数の場合は抽選)
参加費:無料
主 催:大阪市立近代美術館建設準備室
企 画:remo / 特定非営利活動法人 記録と表現とメディアのための組織

映像作家のエリザベス・コールと小沢健二がラテンアメリカの生活を独特の視線で捉えた映像の上映会(本人らによる朗読とロンロコ(ボリビアの楽器)の演奏付)及び参加型のトークセッション。既存のテレビや映画にはない、ゆったりとした時間の流れと双方向性を、大き過ぎない親密な空間で体感。映像は3部作となっており、休憩を挟み上映。

映画の内容に関しては、奈良の上映会に参加したという松永洋介さんの日記が一番詳しいと思います。映像自体の印象もだいたいここで語られている通り、とりわけこのあたりが秀逸かと。

土地土地で地元のおばさんへのロング・インタビューが入っている。その言葉の賢いこと。社会の現状を把握し、政治を見つめ、人がいきいきと暮らせる社会を希望しているようすが伝わる。カメラはその表情も、言葉も、生活もよく拾っている。子どもたちのようすも、人のそばで暮している犬や猫も撮れている。鸚鵡もいた。

転載元:日記@奈良: 「おばさんたちが案内する未来の世界」を見てきた/友達の旅の立派な報告会として楽しめた 2007年12月6日(木)日も差すがわりと寒い 朝の気温は3℃だった

つまり、直接的に扱われる題材は南米における「反グローバリゼーション運動」であり「ウゴ・チャベス」であり「ボリビアの鉱山」であったりするわけですが、むしろその中心にある「人」もしくは「人間性」こそが主題。もう少し突っ込んで書くと、本来金で金に替わるはずのないものまで金に替えてしまう社会構造がその一方で人々から人間性を奪っているという状況において、奪われた人間性を取り戻すべくそれが一体何なにであるのかをもう一度考えてみる、そのための題材としての「南米における反グローバリゼーション運動」であり「チャベス」であり「ボリビアの鉱山」であり「おばさん」であると……そういう映画でした。

こんなふうに書くと「あぁ、そっち系ね」とか言われてしまいそうですが、この映画で語られる「人間性」はいわゆる人道主義的ヒューマニズムの文脈にあるものではなく、もっとプリミティブな普遍性を持つもの。それは今はなきオザケン的に言うなればはこういうことかな。

「よろこびを他の誰かと分かりあう/分かち合う、それだけがこの世の中を熱くする。
それだけがただ僕らを、悩めるときにも、未来の世界へ連れてく」(小沢健二)

転載元:イルコモンズのふた。

だからですね、若き日に彼の歌でガツンとやられちゃってそれ以降恋の始まりは決まって頭の中で「ローラースケートパーク」が流れたりする自分にとっては、この映画が不思議なくらい違和感なく受け入れられ、さらにはやっぱり軽い衝撃も受けたりするわけです。「あぁ、そっか。オザケンは南米のおばさんの中に光を見つけたんだなぁ」と。考えてみれば90年代の彼はそもそも日本のポップミュージック界において徹底して人間性について自問自答してきた孤高の人ですから、ある意味「そっち系」的な評価もうけにくく、まただからこそ今のような活動は彼以外なかなかできないだろうなという気もします。っていうかそういうことは抜きにしても、人間性の部分から社会システムを考え直すというアプローチ自体しごく当たり前のようにも思えるし。

そしてこの作品で語られたもうひとつのテーマ(?)、人間性を持って生きる上での地盤となる「土」もしくは「土地」について。これはつまり大きく「環境」って話だと思うんですが、そこには土地に根付いて生きていくといういわゆる“土着”という生き方と、「石油の原価は0円」ってしゃあしゃあと言っちゃうような“経済”のあり方という2つの意味があるように感じました。まぁ、繋がってるといえば繋がっている話です。実はこのあたりの話は、7月にディレクションした「こころのたねとして」でも少し触ったんですけど、個人的に共感するのはちょっと難しいですね。とりわけ“土着”に関しては、70年代生まれの新興住宅地育ちにはまるでリアリティが持てない。むしろ大きく「環境」と受け取った方がわかりやすいエコ的文脈で理解できます。だからといってボリビアの鉱山で採れた錫が自分のMacやiPodを捨てる気にはなりませんが……って、あれ、これは労働搾取の話だっけ? なんか混乱してきましたね。

映像に関しては純粋に良くできてるなぁという印象です。未来からの回想という全体構成も面白いし、なにより撮る側と撮られる側の上下関係を感じさせない目線にエリザベス・コールのドキュメンタリストとしてのセンスを感じました。多少荒っぽい編集や妙に素人臭いテロップも、作品の趣旨に不思議とあっててあれはあれでいい感じ。そして意外にも地下数十メートルの坑道にまで潜っていくガチっぷりにも驚かされました。そしてやっぱり一番印象的だったのは「上映」ではなく「ライブ」だったこと。もちろん「あのオザケンの演奏を生で!」というのが大きかったんですが、単に流れている映像を鑑賞者が受け取るのではなく、その映像について誰かが伝えてくれているというスタイルが、想像以上に表現力を発揮することに驚きました。一時停止するたびに画面表示が表れるミニDVでの再生スタイルも、妙にたどたどしくて面白かったです。

実はこの映画をみたのは夏の新世界ココルームに続けて2回目だったんですが、1回目は急に呼び出されたこともあってなんか状況を整理するので手一杯でw、今回ようやく作品自体をゆっくり観ることができました。全体の感想としては、まぁすこし他人に説明しにくいような内容ですが、興味のある人は機会があればぜひ見てほしいなと思います。映画を見てみたい、南米に行ってみたい、社会運動に興味がある、オザケンに会いたい……興味の持ち方は何でもいいと思います。とにかくまずは実際にその場に行って、映画を観て、そうしたらいろんな意味でちょっと忘れがたい1日になるんじゃないかなと思います。そしてこれは個人的な意見だけど、できれば話の出来る友人や知人と何人かで行くことをお薦めしますね。たぶん見終わった後に誰かと話してナンボの作品だと思うから。

****************

と、ここまでがイベント的には第2部。で、ここまでは普通に楽しかったんですよ、ここまでは……。ということでかなり意外な展開の第3部はまた次回。お楽しみに。

小沢健二「Ecology Of Everyday Life 毎日の環境学」
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小沢健二「刹那」
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