アーティスト

岩淵 拓郎 (いわぶち たくろう)
http://www.mediapicnic.com/iwabuchi/

美術家/執筆・編集者。73年兵庫県生まれ。関西を拠点に文字とその意味をモチーフとしたマルチプルやインスタレーションなどの作品を発表。同時に雑誌・新聞などにおける執筆・編集業務、各種メディアにおける個人による情報発信の研究と実践を行う。04年〜、大阪南森町で住居用マンションを使ったクリエイティヴワークスペース「208」主催。京都造形芸術大学通信教育学部建築デザインコース非常勤講師。NPO法人芸術と計画会議(C.A.P.)メンバー。

個展
2001 「意味と彼女」(神戸)
2002 「言葉がそこにあるということは」(神戸)
2004 「灘駅で本を読む日。」(神戸)
2005 「STORE」(大阪)

主なグループ展
2000 「東京ラビットパラダイス」(ロンドン Selfridge ほか)
2000 「Trouve - Re:Trove」(マルセイユ Garelly-521)
2003 「のんぽり大阪・」(大阪 SUMISO)
2005 「piano,piano」(大阪 築港赤レンガ倉庫)

アーティストによるプロジェクト解説

今回のプロジェクトにあたって最初に和歌の浦を訪れた時の印象は、非常に複雑なものでした。独特な地形、それを利用した景観設計、戦後の観光地開発、そして人々の暮らし……そこにはいくつもの独立した次元が隣り合わせにあって、ひとつの印象的な風景を構成していました。それは決して「共存」ではなく、かといって「反発」でもない、ごく自然で緩やかな「混沌」でした。この地にはいくつもの未整理な理由や文脈があって、それらが未整理であることこそに現在の「この地らしさ」がある。私は和歌の浦の風景をそのように理解しました。

このような和歌の浦の風景に対してアートという切り口から何が出来るだろう? この問いに対し、私は未整理であることを未整理のまま受入れるための言葉をを《作品》というカタチで提示することにしました。タイトルは『11 meaning for the landscape(風景のための11の言葉)』、12cm×12cmのアクリル板に言葉とその意味が文字によって記されたシリーズ作品です。そしてこれらの作品を和歌の浦周辺に設置しながら、その場所から見える風景についてワークショップ参加者とともに捉え直していこうと思います。未整理を未整理のまま受入れ、その上で新たな解釈を持った時、私たちは和歌の浦の風景について今一度語り合うことができるのではないかと考えています。

美術家の仕事は何かに新しい視点を投じて、それをとおして見えてくる新しい価値を提示することである考えています。今回のプロジェクトは1日かぎりのの小さなプロジェクトではありますが、和歌の浦の風景に、そして景観へのアプローチのあり方そのもに、何かしらの新しい価値や可能性を提示できれば幸いです。