業務内容:書籍の編集
クライアント:特定非営利法人 こえとことばとこころの部屋(ココルーム)
クライアント:特定非営利法人 こえとことばとこころの部屋(ココルーム)
記録ではなく、思考と発見のためのアートプロジェクト・ドキュメント
2007年5〜7月に大阪・新世界フェスティバルゲートで行われたアートプロジェクト「こころのたねとして」のドキュメントブック。編集、ならびにプロジェクトディレクターとして一部執筆を担当。
アートに図録以上のドキュメントが必要になったのは、作品そのものより制作プロセスに重きをおいたり、またはアートでなく社会や地域といった文脈の上で作品を機能させることを目的とする、つまり「アートプロジェクト」以降のことです。しかしながら、アートプロジェクトをいかにドキュメント(=記録)するかについては、この解説を書いている2016年12月時点においても、いまだ確固たる手法は存在していません。
そういう意味でアートプロジェクトのドキュメントとしての本書は、文庫本/292ページ/図版なしという特殊な形態ではあるものの、しかしその有り様についてはかなり踏み込んで具体化することができた一例だと思います。構成としては、1章でプロジェクトが立ち上がった経緯、2章でプロジェクトから生まれパフォーマンスとして舞台で朗読された文章作品、3章では実際にパフォーマンスを目撃した人々による批評的思索、さらに4章では前章から浮かび上がった「場所の力」という概念についてのより専門領域から掘り下げ――といった感じになっています。つまり、プロジェクトの記録を目的とするのではなく、むしろそこを起点として生まれる思索をプロジェクトに還元し、あらためてプロジェクトそのものを意味付けすることを試みています。
なお、本書はアートプロジェクトのドキュメントブックとして異例の三版まで出版されており、とりわけ三版には詩人・谷川俊太郎さんのココルームのために書き下ろしの詩が掲載されています。
『こころのたねとして―記憶と社会をつなぐアートプロジェクト』
- 著者
- こたね製作委員会
- 編集
- 岩淵拓郎(メディアピクニック)、原口 剛
- 執筆
- 岩淵拓郎(美術家・「こたね」ディレクター)
上田假奈代(詩人/NPOココルーム)
小暮宣雄(京都橘大学/アーツマネジメント)
SHINGO☆西成(ラッパー)
瀬名秀明(作家・東北大学/SF機械工学)
松井美耶子(小説家・音楽家) ほか - 装丁
- 境 隆太
- 判型
- A6
- ページ数
- 292ページ
- 発行日
- 2008年4月1日
- 発行所
- 特定非営利法人 こえとことばとこころの部屋(ココルーム)