期間:2013年11月
制度としての“映画館”を読み替える実験づくしの映画祭
2000年から毎年秋に開催されている兵庫県宝塚市の市民映画祭。阪神・淡路大震災を機に生まれた公設民営の映画館シネ・ピピアを会場に、国内外の秀作の紹介、かつて日本映画黄金期の一端を担った宝塚映画製作所作品の発掘など、市民からも映画ファンからも愛される手づくりの映画祭を目指す。14回目のテーマは「シネマハック100〜町の映画館をもっと面白くするアイディア集」。
この年のはじめ、映画祭の会場である映画館シネ・ピピアはデジタルシネマ機器の導入ために存続の危機に立たされました。結果とし市の予算がついて存続が決定しましたが、映画祭の準備が動きはじめた当初はまだ状況が不透明な状況でした。そんな中から「地域の映画館の価値を見つめ直し、そのポテンシャルを引き出すための試みを行う」という一風変わったテーマが浮上したのは、ある意味とても自然な流れだったとも言えます。
そうして実施された第14回宝塚映画祭は「シネマハック100」を含め実験的な企画が盛りだくさんでした。プレイベントとして開催された「みんなが撮った町の写真を映画館で観る会」「この町を面白くする10人のプレゼンテーションパーティー」、上映券つきポップコーン「サポーティング・ポップコーン」の販売、若手映画人と学生ボランティアによる公式トレイラーの制作、市民参加による上映前アナウンスの制作、阪神間在住の選曲家によるロビーBGMプレイリスト委嘱、「FREE TALK ABOUT CINEMA」キャンペーンの実施、パンフレット交換本棚の設置などなど、正直振り返ってみてもよくこれだけのアイディアを詰め込んだなというほどに密度の濃い内容となりました。
なお、ウェブマガジンGreenzに編集者・狩野哲也さんによる映画祭の紹介記事、11月1日発売のミーツ・リージョナル誌に編集者・竹内厚さんによる僕のインタビュー記事が、掲載されました。他にもさまざまな媒体に取り上げていただきましたが、とりわけこの2つに関してはこの年の映画祭の空気感をよく伝えていただいたと思います。よろしければご一読を。
第14回宝塚映画祭
- 会期
- 2013年11月9日(土)〜11月15日(金)
- 会場
- 宝塚シネ・ピピア
- 共催
- 宝塚市、(公財)宝塚市文化財団
- 主催
- 宝塚映画祭実行委員会
- 全体テーマ
- シネマハック100 〜町の映画館をもっと面白くするアイディア集
- 上映作品
- この空の花 長岡花火物語(2012/日本)、Playback(2012/日本)、ペルシャ猫を誰も知らない(2009/イラン)、NINIFUNI(2011/日本)、893239(2006/日本)、田んぼdeミュージカル(2002年/日本)ほか、全15作品
- 出演ゲスト
- 森田和幸(キネプレ)、江 弘毅(編集者)、村上知彦(編集者)、桐木憲一(漫画家)、高野昭二(元宝塚映画監督)ほか